妻の言語と右下肢の機能に比べて右上肢の機能は回復が遅いが,2023年4月頃から始まった回復感ラッシュは右上肢へも波及し,彼女の気持ちがポジティブになる傾向はその後も続いている。右上肢の機能は回復が遅いだけに,「右上肢の機能回復のためのリハビリ」のページに整理したように,これまでさまざまなトレーニングが続けられ,繰返し実行されてきた。
2023年4月頃からの右手指が動く気配は,以前に入手して医師や作業療法士さんから指示された時に使っていた握りしめるグッズ(「にぎりっち」など,「ボトックス注射後の歩行機能の一時的不安定と上肢機能回復への試み」のページを参照)を,彼女に自主的かつ継続的に,右手で握りしめさせている。(2023-05-08)


以前はボトックス(BTX)注射をきっかけとして,いろいろな回復が見られたが,最近の(特に4月以降の)回復感は,BTX注射とはあまり関係なく(BTX切れの時にもかかわらず)回復感が起きているように見受けられる。
「にぎりっち」を握りしめる妻の右手について,次に示す以前の写真(2021-10-02撮影)と上記の写真(2023-05-08撮影)とを見比べると,拇指対向性が明確になってきていることが分かる。霊長類らしくなったと言うべきか。しかし2年かけてもこの程度の回復というのが,この病気の辛いところ。(2023-05-10)

右上肢の回復感は,右の手首から先の温感の強化としても現れ,妻はそこが「暖かい」と言う。これはお湯に触れて感じるような温かさではなく,体温のある生身の身体の一部としての感覚のようで,2022年7月頃にもそれを感じたと言っていた(「ボトックス注射後の右上肢の回復」のページを参照)が,現在はさらに強く感じている様子。(2023-05-08)
温感に加えて触感の強化もある模様。以前,理学療法士さんは,座布団で隠した妻の右手の指に触れて,どの指に触れたかを妻に指摘させるような触感のチェック(「感覚の回復と変化」のページを参照)を実施していが,その当時よりはるかに触感は強く正確になっていると妻は言う。(2023-05-08)
妻は,昨夜から自力で肘を曲げられるようになったと言って喜んでいる。これも4月頃から始まった一連の回復傾向の一つ。確かにこれまで右上肢を持ち上げる時には,主として肩の関節だけを動かして持ち上げていた。(2023-05-16)

その後も妻の右上下肢の麻痺からの一連の回復傾向は続いている。5月18日には,右手の人差し指が伸び易くなったとの報告を受けた。子供の手遊び運動の歌「むすんでひらいて」が言う「むすんで」はできるが,「ひらいて」がなかなか難しく,作業療法リハビリでは手首を動かして指を開かせる(テノデーシス,「家事への参加復帰に向けてゴミ集め」のページを参照)トレーニングを続けてきた。
それに先立ち16日には,右足の親指に力が入るようになって歩き易いと彼女は言っていた。さしずめ「指1本 1本ほどの 麻痺の回復」といったところか。(2023-05-18)

5月24日には,妻は右手中指にも回復感を感じ始めたようで,左手でそれを摘まんで引き伸ばし,さらに右肩から右手中指までを擦りながら「ヘンな感じがする」と言う。30日には,右手小指に対しても,同様の対応を始めた。31日の訪問リハビリで理学療法士さんは「右手の中指が伸展している」と報告書に記載。これらの指は,これまでの作業療法リハビリでは,親指以外の指としてひとまとめにして扱われていた。(2023-05-31)

回復感が遅れていた右手薬指については,6月2日になってようやく動き出す気配を感じたとの妻の報告を受けた。5本の指の回復感が出揃ったことを受けて,それまで使っていた握りしめるグッズより幾分大きめのボールを100円ショップで購入し,さっそく使ってもらった。指が柔らかくなっていて,楽に握れるみたい。(2023-06-02)

しかしこの”プチサッカーボール”は,使い始めてわずか1日にして縫い目が開きはじめた。妻の握りしめる力が強すぎるのか,縫製が悪いのか? (2023-06-03)

訪問リハビリの作業療法士さんは,この”プチサッカーボール”を握りながら指の力を抜き,時々力を入れて握りつぶす作業を繰り返すような右手のトレーニングを妻に指示していた。(2023-06-08)

利き手の右手に麻痺が残る妻は,文字を書く時には左手を使うことにすっかり慣れてしまったが,まだ右手による文字筆記を諦めたわけではなく,時々その練習をしている。
7月14日の言語の訪問リハビリで,妻はフリーディスカションの中でたまたま右手で文字を筆記をすることがあったようで,それを見た言語聴覚士さんから「ウァー,そこまでできるんだァ」とのコメントをいただいていた。
しかし「できる」とは言っても,まだ左手によるサポートは必須。2年ほど前は,筆記用の補助具を使って右手で鉛筆を掴むのがやっとで,右手首を掴んだ左手を動かして鉛筆を動かしていた(「右上肢の回復」のページを参照)。今回は,補助具なしの右手で鉛筆を掴み,鉛筆を掴んだ右手の指を左手でサポートして鉛筆を動かしている。微々たる回復ではあるが,文字を書くという行動には,手指の筋肉に対して脳からのかなり複雑な指示が必要なのであろう。(2023-07-14)
