階段(段差)の昇り降りは,日常生活に必要な課題であるため,退院して間もない頃(2018年3月)に通っていたリハビリクリニックで,最初のトレーニングが行われた。当時はプラスチック装具を使い始めた直後て,水平な床の上を歩くだけで精一杯なのに,突然実際の階段の昇り降りをさせられて,妻は怖かった記憶だけが残っていると言う。しかし4月にはマンションの玄関にある2段の階段だけは昇り降りできるようになったので,そこを車椅子で移動するために使っていたスロープをレンタル業者に返却した。(2018-04-27)
その後,階段の昇り降りのトレーニングは,訪問リハビリの理学療法士さんによって続けられた。彼はまず,片足障害の患者に対する通常のリハビリ指導どおり,次の昇降方法を教える。
- 昇り方は「健足先行・病足追従」: 障害のない足を先に振り出し,次に障害のある足をそれに揃える。
- 降り方はその逆の「病足先行・健足追従」: 障害のある足を先に振り出し,次に障害のない足をそれに揃える。
つまり妻の場合は,麻痺のない左足から昇り,次いで右足をそれに揃える,そして麻痺のある右足から降り,次いで左足をそれに揃えることが勧められた。しかし妻は,昇り方も降り方も「健足先行・病足追従」をとり続けた。


それを見た理学療法士さんは,通常のリハビリ指導どおりに実施する必要はなく,本人にとってやり易い方法を採用するのが適切と指導していた。(2019-10-10)
私も右膝の変形性膝関節症の関節痛があるので,理学療法士さんが勧める「昇り方は健足先行・病足追従,降り方は病足先行・健足追従」はよく分かる。指導されなくても,痛みがあるとそうならざるを得ない。妻の降り方がそうでないのは,脳出血による足の麻痺では,痛みはなく,昇り降りを別の方法で実行することにむしろ負担があるのかなと思えた。
理学療法士さんは,妻と同じ降り方「健足先行・病足追従」をする患者を何人か知っているとのことで,彼らは病足を先行させると,病足の着地場所が定まらなくなって(定まらないような気がして)怖さを感じるために,健足先行してしまうのであろうと分析していた。
通常の階段だけでなく,屋内にあるわずかな段差についても,妻は同じ降り方をしている。たとえば,洗面台のある場所と廊下とのわずかな段差や床に置かれた厚さ3.5cmの板の上からも,「健足先行・病足追従」で降りている。そんな妻の様子を,キャンツはしっかり観察している。



この厚さ3.5cmの板は,妻が屋内を車椅子を使わずに杖をついて歩くようになったばかりの頃,トイレと廊下との間の段差が大きくて辛いと言うので,トイレの前の廊下にこれを置いて段差を小さくするために導入した。
その後,脚の力が強くなってこれは使わなくなったが,理学療法リハビリに際して雑誌などと同様に(「訪問リハビリで使う代用品」のページを参照),足裏に敷くスペーサとして利用することがあった。なおこの板を使わなくなっても,トイレから出る時の段差の降り方は「健足先行・病足追従」である。
妻は足の調子が非常にいいときに,習得したはずの昇降方法をつい忘れて,健康だった時の(先行・追従を繰り返すのでなく)交互に足を振り出す昇降方法を使ってしまい,倒れそうになったことがあった。(2020-12-26)
2022年になると9月14日の訪問リハビリで理学療法士さんは,妻の歩行時の右足が(顕著な内反があるわけではないが)小指から着地していることに気付き,それを改善すればさらに歩行が安定するであろうと判断。右足から段差を昇ってみることを彼女に提案した。

しかし彼女は,段差の昇り降りは「健足(左足)先行・病足(右足)追従」を続けていて,右足から昇ろうとしても怖さを感じてしまい,このトレーニングを断念せざるを得なかった。(2022-09-14)

その後,妻は右膝の裏側付近の筋肉に回復感を感じるようになって,右足の小指からの着地の問題は軽減しつつある。

